パニック障害
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1)パニック障害の症状…その時何が起きているのか?
パニック障害の発作が起きると、まず、10分以内にピークに達する激しい不安に見舞われます。そして、以下のような自律神経の症状が伴います。
- 動悸(胸のドキドキ)
- 息苦しい、息が荒い、時には窒息感
- 汗が出る
- 身体や手足が震える
- 胸が痛い、胸の不快感、または咽喉(のど)がつまる感じ
- 腹部の不快な感じ、時には吐き気
- めまい、ふらつき、立っていられない、しゃがみこんでしまいたい
- 体が熱い、または寒い
- 頭痛、肩こり、耳鳴りなど
これらの9項目のうち、3~4項目があれば、パニック障害による発作と判定することができます。自律神経には、交感神経系と、副交感神経系があります。不安を感じた時に活動するのは、主に交感神経系の方です。交感神経系の本来のはたらきは、不安(を感じる状況)に対する備えです。ところが、交感神経系が過剰に活動してしまうと、逆に人間は強い不安を感じてしまいます。強い不安が交感神経系の過剰な活動を引き起こします。交感神経系の過剰な活動が、さらに強い不安を引き起こします。この連鎖反応が、パニック障害(による発作)の機序(メカニズム)です。
2)交感神経系の本来のはたらきとは?
それは、身体(からだ)を活動的にして、精神(こころ)を勇気で満たすことです。
真っ暗な夜道を独りで歩くと、誰でも、胸がドキドキしたり、手足が震えたりします。これは、危険な状況に備えて交感神経系が活動した結果です。息が荒くなって動悸がするのは、全身に血液と酸素を送り込むためです。筋肉が緊張して体が震えるのは、激しく体を動かすための準備です。スポーツ選手が試合前にウオームアップをするのと、同じ目的です。そして、交感神経系が適度に活動すると、心は勇気に満たされます。昔の勇敢なサムライが、戦(いくさ)の前に「武者ぶるい」をしたのは、交感神経系が適度な活動をした結果です。
武者ぶるいとは、「戦に臨む時などに心が勇み立った余りに身体のふるえること」です(広辞苑)。つまり、心は勇気に満たされ(勇み立って)、体は適度に緊張して(ふるえて)います。戦(いくさ)が怖くて震えているのではありません。
3)交感神経系が過剰に活動すると?
逆に、交感神経系が過剰な活動をすると、それだけで人間は恐怖を感じます。
この状態では、まず、激しい動悸がして、息があがってしまいます。全身の筋肉が硬直して足がガクガクし、立っていることも難しくなります。
頭の周囲の筋肉が緊張すると、頭痛がします。肩の筋肉が緊張すると、肩こりとなります。耳の奥の筋肉がこわばって、耳鳴がすることもあります。内臓の筋肉が緊張しすぎると、腹痛や吐き気をもよおします。汗が出るのも、交感神経のはたらきです。これが、パニック障害での発作時の、自律神経の症状です。この状況では、危険に立ち向かうことはできません。不安感が、ますます高まっていきます。
強い不安を感じると、いきなり交感神経系が過剰な活動を開始することがあります。その結果引き起こされる心身の激しい緊張状態が、さらに過剰な交感神経系の活動を引き起こします。この悪循環が、パニック障害の正体です。
4)パニック発作の治療…どうすれば悪循環を断ち切れるのか?
パニック障害の発作を起こさないための治療薬には、塩酸パロキセチン(代表的商品名、パキシル)、塩酸セルトラリン(商品名、ジェイゾロフト)などを用います。また、発作が起きた後の「火消し」には、アルプラゾラム(代表的商品名、ソラナックス)やエチゾラム(代表的商品名、デパス)などの抗不安薬を用います。そして、発作が起きても薬で対応でき、心が安らいでくると、次第に発作が起きにくくなります。その結果、薬を使うことが少なくなっていきます。不安に対抗するものは、「心の安らぎ」です。