認知症(アルツハイマー型・レビー小体型)
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1.認知症とは(アルツハイマー型認知症)
緊急警告!アルツハイマー型認知症治療剤が、乱用される傾向にあります。
アルツハイマー型認知症治療剤とは、ドネペジル塩酸塩(先発品の販売名は、アリセプト)、メマンチン塩酸塩(販売名、メマリー)などです。これらの薬剤が、有効な場合もあります。使用するのであれば、次のような注意が必要です。
- アルツハイマー型認知症を治療するうえで、薬は補助的な役割しかないということを理解する。
- ちゃんとした使い方をする。
- 薬の副作用には、細心の注意を払う。認知症が進行するほど、患者さまは薬の副作用を訴えることができません。
- 作用がない場合は、アルツハイマー型認知症治療剤を中止する。
詳細は、このページの下半分で説明いたします。
歴史は、繰り返す。医療従事者は、ホパンテン酸カルシウムによる薬害の教訓を忘れるな!
1983年に、ホパンテン酸カルシウムが、脳血管障害の後遺症改善薬として承認されました。その後、ホパンテン酸カルシウムは、認知症治療薬として幅広く処方されました。本来の作用(脳血管障害の後遺症)とは違う使われ方がなされたのです。ところが、1989年になって、ホパンテン酸カルシウムの副作用により11名の患者さまが死亡していたことが判明しました。間もなく、ホパンテン酸カルシウムは使用されなくなりました。
あの頃に比べて、医学は格段に進歩しました。現在のアルツハイマー型認知症治療剤は、以前よりよくなりました。それでも、上記1)~4)の注意は必要です。認知症が進行するほど、患者さまは薬の副作用を訴えることができません。この事実は、医学がどんなに進歩しようと変わりません。
1)アルツハイマー型認知症を治療するうえで、薬は補助的な役割しかないということを理解する
現在のアルツハイマー型認知症治療剤が、脳の神経細胞の変性することを防ぐ薬ではありません。残った神経細胞を刺激するだけの作用しかありません。そして、神経細胞を薬で刺激することが、さまざまな副作用の原因でもあります。
2)しっかりした使い方をする
これらの薬は、アルツハイマー型認知症以外の認知症には効きません。きちんとした診断をするために、一度は頭部のCT検査をしておきたいものです。頭部のCT検査は、同じメディカルビルの2階にある緑井脳神経外科クリニックで行えます。同クリニックでは、MRIの検査もできます。
3)薬の副作用には、細心の注意を払う
あらかじめ、副作用について知っておく必要があります。ドネペジル塩酸塩で目立つ副作用は、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢です(患者さまの1%以上に出現)。不整脈(徐脈、心ブロック)、狭心症、心筋梗塞、肝炎なども見逃せません。頻度は少なくても、起きた時には重大です。
メマンチン塩酸塩の主な副作用は、めまい、肝機能異常、血糖値上昇、食欲不振、体重減少などです(いずれも1%以上)。特に使用開始の初期に出やすい副作用は、めまいと眠気です。
いずれにせよ、定期的な血液検査と、心電図の検査が必要です(ただし、患者さまが検査に協力してくださる場合です)。
4)作用がない場合は、アルツハイマー型認知症治療剤を中止する
では、どの程度の作用があるのか、ということになります。アリセプト(販売名)の効能書から引用します。
軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症の患者さまにアリセプト5mgを使用した結果、著明改善1%、改善16%、軽度改善34%、不変31%、軽度悪化16%、悪化3%、判定不能1%でした。
薬を使って悪化する場合が19%あることには、注意が必要です。また、一定期間使用して不変(良くも悪くもならない)であれば、他の薬に変更するか、または薬は中止すべきです。ただし、いきなり中止するのではなく、少しずつ減量したうえで中止するのが良いと私は思います。
5)追記(2014年3月23日)
私が上記の文章を作成したのが、2012年3月頃でした。最近になって、米国老年医学会が、「作用と副作用を定期的に評価せずに、アルツハイマー型認知症治療薬を処方すべきではない」という警告を発しました。
2.認知症とは(レビー小体型認知症)
映画を見ているような、具体的で明瞭な幻覚(主に幻視)が、レビー小体型認知症の特徴です(例、「他人の子供が、風呂場に入ってきた」)。また、寝ている時に大声を出すことが多いことも、この型の認知症の特徴です。夜間の大声は、発病の何年も前からみられることがあります。
3番目の特徴は、薬の副作用が出やすいことです(特に、精神・神経系統に副作用がでやすい)。そのため、アルツハイマー型認知症の場合以上に、慎重に薬の治療をしなければなりません。幸いに、アルツハイマー型認知症よりも少ない薬で作用が出ます。